牛乳の効能

近年、牛乳は日本人の生活にしっかり根をおろしています。

 

しかし、中高年世代の人々は、牛乳や乳製品を積極的にとろうという気持ちがいまひとつ足りないような気がします。 世界の長寿村といえば、なんといっても有名なのがコーカサス地方です。

 

100才以上の老人が多いことで知られますが、年をとっても元気なのは血管の病気が少ないから。 その食生活を調べてみると、牛乳や乳製品を実に豊富にとっていることがわかりました。また、北海道の酪農家を対象にした調査でも、牛乳を飲む人に長寿者が多く、男女とも80才以上の人の8割が毎日、牛乳を飲んでいました。

 

牛乳のタンパク質に高血圧を防ぐ作用があることは、次のような実験によっても確かめられています。 牛乳のタンパク質はホエー・タンパク質とカゼイン・タンパク質から成り立っています。

 

脳卒中ラット(普通に飼育すると100%脳卒中を起こすネズミ)を①普通のエサを与える、②ホエー・タンパク質を含むエサを与える③カゼイン・タンパク質の入ったエサを与える、以上の3つのグループに分け、血圧の変動と脳卒中の発症を調べました。

 

①の普通のエサを与えたネズミは、100日を過ぎたころから血圧は220mmHgにも上がって、そのまま下がりませんでした。この状態が続くと、高い圧力のために血圧はしだいに弾力を失い、動脈硬化をおこします。

 

すると、血液が堅くなった血管の中を無理やり通らなければならないため、ますます血圧が上がって、さらに動脈硬化が進行するという悪循環が起こります。その結果、慢性高血圧症となり、早く脳卒中で倒れてしまうのです。

 

一方、②③の、牛乳のタンパク質を加えたエサを与えたbネズミは、長期的には血圧上昇が抑えられて安定した数値を示し、脳卒中の発症もずっと後になってからでした。

この実験から、牛乳のタンパク質には血管をしなやかにして動脈硬化を防ぐ作用があり、そのおかげで慢性の高血圧を予防する働きがあることが確かめられました。 また、牛乳のタンパク質には、メチオニンなどの含硫アミノ酸が多く含まれています。

 

含硫アミノ酸には、脳の中枢に働きかけて交感神経の興奮を抑え、血圧を下げる作用があります。さらに、高血圧の元凶であるナトリウムを細胞内から追い出して、体外に排出する働きもあるのです。 しかも、われわれが日頃飲む牛乳には、実験のようなタンパク質だけではなく、カリウムやカルシウムなど、血圧を下げるミネラルもたっぷり含まれています。

 

中高年層にとっては、まさに薬以上の貴重な食品といえるでしょう。 最近は脂肪量を抑えた低脂肪乳や牛乳を飲むとおなかの調子が悪くなる人のために、乳糖を除いた牛乳なども販売されています。

 

自分の体調や体質にあるものを飲んでください。なお、成人が1日に摂取すべきカルシウムの必要量は600mgです。